かけがえのないものに憧れた。

あたしはいつでも誰かに必要とされたくて、ハムスターを飼ってみたけど懐いた頃に病気になって死んでしまった。小さな亡骸を両手に乗せて声が枯れるまで泣いたあの日、あたしはひとり残されたんだ。

あたしはこれといって端正な顔立ちなわけでもないし、褒められるような性格でもないし、勉強も運動も人並み以下で、結局のところ、世の中に五万といるような人間なんだと思う。そんなあたしが誰かに必要とされるには、何をどうしたらいいっていうの。

大事な友達もちゃんといるし、家族だっているし、あたしはこの世にひとりぼっちだとか嘆いているわけではなくて。つまるところ、あたしじゃないと駄目な何かがほしいって、ただそれだけのこと。

そう、ただそれだけ。なのに、そんなに難しい願いごと?あたしにしかできないことなんて、この世界に在るのだろうか。

きっと、あたしが今ここで死んだって、何もなかったかのように季節は巡るでしょう。泣いてくれる人はいると思うけれど、いつかまた笑える日が来るんだろうし。

かけがえのないものに憧れた。それは、決して叶わぬことのない願いのように思えた。

 「天然記念物」 06.06.13