飽きもせず降り続く雨の中、紫陽花が咲いてた。

そこらへんのコンビニで買った透明な傘で、あたしは雨と戦ってた。防戦一方、ううん、ずぶぬれの足を見れば負け試合なのは瞭然。買ったばかりのウェッジソールのつま先は剥げかけたペディキュア。春みたいな桃色のシロップネイルは、春とともにあたしから去っていった。

あたしはずっといい子のフリをしていて、天使みたいにはなれないから適度にわがままは言うけれど、本当の願い事は口にもできなかった。

お願いひとりにしないで、なんてかっこ悪い台詞、口が裂けても言えない。でもそれが、かっこ悪いあたしの本当の気持ちなので、単純なあたしの顔はついさみしそうな何かにすがる目をしてしまって、そういうとき鏡だとか街中のビルの窓とかでうっかり自分を見てしまうと最低な気分になる。

雨にも負けずあの花のように、ひとりでもきれいに咲いていられたらいいのだけれど、残念ながらあたしはそんなに強くなんてないので、やっぱり誰かが守ってくれたらいいのにって思ってる。今のところ、あたしを守ってくれるのは買ったばかりの透明な傘だけっていうのが最高にかっこ悪いよね。

 「雨、傘、紫陽花」 06.06.11