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夏の匂いがした。

ぬるい風が頬を撫ぜ、髪を泳がせて過ぎた。何処か遠くで虫が鳴く。

何かが変わる予感がした。希望溢れる始まりの予感、というよりは物悲しい終わりの予感に近くて、耳を塞いで縮こまっていた。世界が終わる音なんてあたしの記憶にいらない。

誰かに逢いたいと無性に想った。朧月の浮かぶ夜空は星一つなくて、あたしの願いは叶わぬままだ。それでもあたしは、雲の裏で流れたであろう星に一人祈る。

このまま独りだったらどうしよう。世界で一番静かな叫びは、ぬるい夏の匂いと虫の声にかき消されて朧月のように霞んで消えた。

 「朧月」 06.06.01