何かから逃げるように、夜道をただひたすら走った。どこまで逃げても夜は暗いままで、まとわりつくような淋しさは体中から抜けなかった。
めまぐるしく変わる景色の端で星が流れた。かけたい願いも見つからないまま、行きたい場所もわからないまま、ただ、ひたすら。
本当はわかっていたんだ、願い事はたった一つ。行きたい場所は地図よりもはっきりと。
あたしが走るのは決して積極的なわけではなくて、むしろひどく消極的であるがためなんだ。自らあなたの中に飛び込んでいく勇気なんかなくて、腕を掴んで引き止めてくれる誰かの腕を待っていた。走り疲れて動けないあたしを休ませてくれる広い胸がほしかった。
ただ立って待っている誰も来ない間が怖くて、あたしは走り出したんだ。それは単なる、強がり。
「強がり」 06.05.29